いまや国民の3~5人にひとりが花粉症患者とも言われ、すっかり国民病の様相の花粉症。
その治療薬は現在多岐にわたっています。
今回は治療薬にフォーカスし、治療薬の種類、市販薬で購入可能なもの等を解説してきます。
※市販薬の使用時には製品パッケージに記載の注意事項をよく読み自分が使用しても大丈夫なのか確認の上、用法用量を守って正しく使いましょう。
花粉症の概要
花粉症とは植物の花粉が原因でくしゃみ、鼻水、鼻づまり等の症状を引き起こす疾患です。
症状が出る原因は呼吸時に鼻腔内に入った植物の花粉です。
この花粉に対して起こる免疫反応によって上記のような症状が出ます。
アレルギー性鼻炎のひとつで、季節性アレルギー性鼻炎とも呼ばれます。
(ちなみにダニ、ハウスダストなど花粉以外が原因となって起こる鼻炎をアレルギー性鼻炎といいます)
また季節性とダニなど花粉以外を原因とする通年性アレルギー性鼻炎を併発する場合も少なくありません。
現在日本人の3~5人にひとりは花粉症というまさに国民病で、発症年齢の低下といった問題も出てきています。厚生労働省ホームページによると15歳以下の小児の花粉症は10.2%とのことです。
原因植物
花粉症はさまざまな花粉が原因となり発症します。
中でも最も広く知られており、花粉症の約70%の原因とされているのがスギ花粉です。これは日本全国の森林でスギが非常に多いためです。
林野庁のホームページによりますと、日本の国土の約7割が森林、そのうち人口林が41%で、人口林のうちの44%がスギとのことです。
ここから計算すると日本の国土の12%はスギということになります。
ちょっと驚きの数字ですね。スギ花粉が圧倒的に多いのも納得です。
また地域差があり、北海道ではシラカンバが多く(スギは少ない)、関西ではヒノキが多いといった特徴があります。
ちなみにスギに次いで多いヒノキは国土全体の7%を占めています。
こちらも林野庁のホームページを参考に算出しました。ヒノキも十分多いですね。
飛散時期
代表的な花粉の飛散時期です。
・スギ:10月ごろ~翌年5月 ピークは3月ごろ
・ヒノキ:2、3月~6月 ピークは4月ごろ
・シラカンバ:シラカンバ4月~6月
・イネ科:北海道6月~9月、その他の地域3月~10月
詳しい日散時期は下記サイトで確認できます。
花粉症カレンダー|花粉症ナビ
症状発現のメカニズム
症状発現のメカニズムは下記図に示すとおりです。
図にあるとおり、
1.花粉が鼻(眼)粘膜に付着
2.細胞内のマスト細胞に結合
3.ヒスタミン、ロイコトリエン、トロンボキサンなどの物質を放出
4.放出されたヒスタミンなどの物質が原因で諸症状が発現
というメカニズムで症状が発現します。
症状
花粉症の症状は一般に非常によく知られています。
中でもくしゃみ、鼻水、鼻づまりおよび目のかゆみは花粉症の代名詞みたいなところがありますね。
これ以外にも花粉症の症状は、のどの痒み、目の充血、涙が止まらない、ひどい場合、めまいや頭痛、倦怠感が出ることもあります。
そしてこうした症状が長期間続くことで集中力低下やイライラなど精神的な課題が出てくることがあります。
対策
花粉情報をチェック
花粉飛散時期には花粉飛散予測が各メディアで確認できます。
花粉(アレルゲン)を避ける
花粉症はアレルギー反応であるため、アレルギーのもととなる物質(アレルゲン、この場合は花粉)を避けることで発症を制御できます。
飛散距離の短いイネ科やキク科などの雑草花粉に対しては、生育場所に近づかないことが最も確実で有効な対策となります。
鼻の洗浄
鼻に入り込んだ花粉を洗い流すことのできる市販薬があります。水道水は鼻の粘膜を傷つけてしまうため(プールの水が鼻に入るとしみるのと同じ感じ)、市販薬を使って行ないましょう。
目の洗浄
目に入った花粉も洗い流すことができます。
「目を洗浄」という目的ではアイボンが有名ですね。
こちらも鼻と同様水道水の使用は眼を傷めるのでやめましょう。
マスク
厚生労働省花粉症Q&A集によるとマスクは、花粉の飛散の多い時に吸い込む花粉をおよそ3分の1から6分の1に減らし、鼻の症状を少なくさせる効果が期待されるとされております。
また、花粉症でない人も、花粉を吸い込む量を少なくすることで、新たに花粉症になる可能性を低くすることが期待されています。
ただし、風が強いとマスクをしていても鼻の中に入る花粉は増えます。マスクをしていても完全防備にはならないので過信は禁物です。
空気清浄機を稼働させる
空気清浄機も花粉症対策に有効な場合があります。
例えば睡眠中の症状を抑えるために寝室で稼働させる等の利用が考えられますね。
その他
鼻をかむ際にやわらかいティッシュを使う、加湿なども花粉症対策として効果的です。
花粉症治療薬はこんなにたくさん
花粉症の薬物治療では主に下記のお薬が使われます。
抗ヒスタミン薬
ロイコトリエン受容体拮抗薬
漢方薬
点眼薬、点鼻薬
減感作療法(アレルゲン免疫療法)薬
以後これらについて1つ1つ解説していきます。
花粉症治療薬<抗ヒスタミン薬>
ヒスタミンには血管拡張、血管透過性亢進作用などがあります。
ヒスタミンがヒスタミン受容体にくっつくことでこれらの効果を発現します。
鼻水やくしゃみ、かゆみなどはこのヒスタミンの効果により自覚症状として出てくると考えられています。
また、ヒスタミンはアレルギー反応を引き起こす神経伝達物質であるため、蕁麻疹等皮膚科系疾患の発現にも関与しています。
抗ヒスタミン薬はこのヒスタミンに拮抗的に作用することで、鼻水、くしゃみなどのアレルギー症状の緩和を目的として使用されます。
現在花粉症薬としては主として「第二世代抗ヒスタミン薬」が使われています。
抗ヒスタミン薬の歴史は古く、「第二世代抗ヒスタミン薬」開発前に「第一世代抗ヒスタミン薬」と呼ばれている薬たちが使われていましたが、第一世代では眠気が出やすいという弱点がありました。
第二世代の抗ヒスタミン薬はこの「眠気がでやすい」という弱点が改善され、さらに薬の作用時間の持続化にも成功しました。
薬が長く効けば1日の服用回数は少なくてすみます。
1日3回の服用が必要だったところ、1日2回や1日1回になるのは嬉しいですよね。
例:ビラノア、デザレックス、アレグラ(フェキソフェナジン)、タリオン(ベポタスチン)、ザイザル(レボセチリジン)など
花粉症治療薬<ロイコトリエン受容体拮抗薬>
ロイコトリエン(以下LT)は鼻粘膜の炎症や鼻づまりなどを引き起こす主な要因となります。
LT受容体拮抗薬はLTに拮抗的に作用しLTの働きを阻止することで、上記のような症状改善を目的として処方されます。
余談ですが、LTは気管支においては気管支を収縮させ気道を狭くする作用があります。
以上が理由で、LT受容体拮抗薬は喘息に対しても広く使用される薬です。
効果としては気管支拡張作用で、喘息による咳や息苦しさの改善、発作予防が期待できます。
現在LT受容体拮抗薬は市販されておらず、医師による処方が必要なお薬です。
例:キプレス/シングレア(モンテルカスト)、オノン(プランルカスト)など
花粉症治療薬<漢方薬>
花粉症に対して使われる主な漢方薬は小青竜湯です。
いわゆる「水っ鼻」に効果があるとされている漢方薬です。
眠気が出るのがどうしても心配という場合や、漢方を好んでいる方にはおすすめです。
花粉症治療薬<点眼薬、点鼻薬>
花粉症において点眼薬や点鼻薬といった外用薬は局所における症状に直接作用させる目的で、内服薬同様広く使われています。
具体的には抗ヒスタミン薬、ケミカルメディエーター遊離抑制剤(ケミカルメディエーターの遊離については発症メカニズムの項参照)ステロイド剤(炎症反応を抑える目的)、などが使われます。
例:インタール(クロモグリク酸) 点眼/点鼻、アレジオン(LX)点眼、フルメトロン点眼液(フルオロメトロン)、アラミスト点鼻液、ナゾネックス点鼻液(モメタゾン)、フルナーゼ点鼻液(フルチカゾン)など
花粉症治療薬<減感作療法(アレルゲン免疫療法)薬>
減感作療法(アレルゲン免疫療法)とは、アレルギー反応が過剰に起こることを免疫的に改善させ、それによりアレルギー症状の起こりにくい体質へと変えていく治療法です。
治療には長期間を要しますが、通常の薬物治療では症状改善がみられない方、通常の薬物治療で副作用のある方にとっての選択肢の1つになっています。
こちらは医師による処方が必要です。
例:シダキュア スギ花粉舌下錠など
花粉症治療薬<市販薬で購入できるもの>
ここからは花粉症治療薬の中で市販薬で購入できるものを紹介していきます。
ここまで紹介してきたもので、市販薬で購入できるものは
抗ヒスタミン薬
漢方薬
点眼薬、点鼻薬
です。
抗ヒスタミン薬
抗ヒスタミン薬は市販薬としていくつか販売されていますが、ここで紹介するのは「第二世代抗ヒスタミン薬」で眠気が出づらいものです。
タリオンARは要指導医薬品のため薬剤師から購入する必要がありますが、その他4種類については第2類医薬品であり、登録販売者からの購入が可能です。
調剤薬局で働いている感覚では、アレグラが最も眠気が出づらい印象です。
表をみるとアレジオン、セチリジン(新コンタック鼻炎Z)、クラリチンは1日1回服用で良いという大きなメリットがあります。服用を忘れてしまっては元も子もないので、服用回数が少なくて済むのはかなり加点ポイントだと思います。
漢方薬
漢方薬で医療用で花粉症治療に使われる小青竜湯は市販薬としても販売されています。
絶対に眠気を避けたい方、漢方が好きな方におすすめです。
小青竜湯については花粉症におすすめの漢方薬として別の記事で詳しく解説しています。
→花粉症におすすめの市販漢方薬を紹介。「水っぱな」に効く【小青竜湯】
点眼薬、点鼻薬
点眼薬、点鼻薬は十分な効果が期待できる市販薬がいくつかあります。
点眼薬はクロモグリク酸ナトリウムが配合されている商品がおすすめです。
クロモグリク酸ナトリウム配合の市販薬はいくつかありますがここでは一例としてAGアイズアレルカットSという商品を紹介します。
点鼻薬はステロイド剤配合のものをおすすめします。
最もおすすめの点鼻薬はフルナーゼ点鼻薬です。
ステロイド成分の点鼻薬で、現在医療用でも同じ成分量のものが使われています。
市販薬の中では最強の点鼻薬と考えてください。
なお、フルナーゼは現在要指導医薬品であり、薬剤師からでないと購入できません。
その他アンテドラッグステロイド配合の点鼻薬もあり、こちらは登録販売者からも購入が可能なものです。
アンテドラッグステロイド配合の点鼻薬の例としてナザールαAR0.1%があります。
まとめ
最後まで読んでいただきありがとうございました。
いかがでしたでしょうか。
今回は花粉症の治療薬にフォーカスし解説してきました。
様々な薬がありますね。
辛い症状が長い期間続く花粉症。治療薬にも色々な選択肢があることを知って頂けたかと思います。
以上花粉症治療薬の解説でした。
※市販薬の使用時には製品パッケージに記載の注意事項をよく読み自分が使用しても大丈夫なのか確認の上、用法用量を守って正しく使いましょう。