今や国民病とも言われる糖尿病。患者数は年々増え続けており、糖尿病の可能性を否定できない人は1,000万人を超えるとも言われています。
この糖尿病の恐ろしいのは、長年の血糖コントロール不良による合併症の発症です。
今回は糖尿病三大合併症とも呼ばれる代表的な3つの合併症を中心に糖尿病の合併症について解説していきます。
糖尿病の合併症を解説。まずは糖尿病の概要から
早速糖尿病の合併症について説明していきます。
合併症は急性合併症と慢性合併症があり、急性合併症は高度のインスリン作用不足によって起こるもの、慢性合併症は長年の高血糖によって起こるものです。
今回解説するのは糖尿病診断後の努力で発症予防をできる慢性合併症についてです。
代表的な慢性合併症は網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害です。
この3つを含む慢性糖尿病合併症について説明していきます。
まずは糖尿病という病気について。
糖尿病とは
糖尿病とはインスリンの作用不足による慢性の高血糖状態を主な特徴とする病気(代謝疾患群)です。
糖尿病には1型糖尿病と2型糖尿病があります。
1型糖尿病は遺伝素因等何らかの原因でインスリンを合成・分泌する膵臓(すいぞう)の細胞が破壊され、絶対的なインスリン欠乏に至る病気です。
一方2型糖尿病は、インスリン分泌低下やインスリン抵抗性を生じさせる遺伝因子に、過食(とくに高脂肪食)、運動不足、肥満、ストレスなどの環境因子および加齢が加わり発症します。生活習慣病と認識され、国民病とも言われている糖尿病はこの2型糖尿病のことであり糖尿病全体の90%以上は「2型糖尿病」です。
症状は
1.膵臓(すいぞう)からのインスリン分泌の遅延・低下
2.インスリンの効きが悪くなる(インスリン抵抗性の増大)
であり、これにより血糖値の高い状態が続くことで血管を傷つけます。
自覚症状に乏しい糖尿病ですが、自覚症状として出現する典型的な症状もあります。
自覚症状については下記記事で解説しました。
→糖尿病かも?そんな時は7つの症状をチェック
高血糖状態が続き長期に渡り血管に負担がかかると、結果として糖尿病三大合併症の網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害という重篤な合併症を引き起こす病気です。
また、これ以外にも心臓の病気、歯周病、認知症のリスクも上がると考えられています。
糖尿病治療の目標は、合併症の発症や進行を阻止することです。
そのために血糖、血圧、コレステロール値、体重などをコントロールする必要があります。
今回はこの合併症について解説していきます。
なお、糖尿病の治療については下記の記事で解説していますのでこちらも参考にしてみてください。
糖尿病の治療は食事療法、運動療法、薬物療法の3本立てです。これらを継続的に行なっていくことで今回紹介する合併症の発症を遅らせることができます。
3つの治療については別の記事でまとめています。こちらも是非ご覧ください。
食事療法
→糖尿病の食事療法は7項目を意識しよう。ガイドラインを軸に解説
運動療法
→糖尿病予防には運動が効果的。運動療法の効果・やり方を詳しく解説
薬物療法
→糖尿病の治療薬、8種類+インスリン。薬剤師が全て解説
三大合併症はこの3つ
ここでは三大合併症と言われている代表的な3つの合併症を紹介します。
これら合併症は長期間にわたる血糖コントロール不良による血管の消耗により引き起こされると考えられています。
糖尿病網膜症
糖尿病網膜症では糖尿病発症初期には自覚症状がないことも多いですが、進行すると最終的に失明に至る恐れがあります。
また糖尿病網膜症は糖尿病と診断された時にすでに発症している可能性もあります。
進行に伴い視界がかすむ、飛蚊症が起こります。
まずは眼科医に診てもらうことが必須です。眼の症状があってもなくても、糖尿病と診断された場合には必ず眼科を受診しましょう。
糖尿病性腎症
腎臓は尿を作る臓器です。老廃物や水分、塩分などを尿と一緒に排泄するために必要な臓器です。
役割は他にもあり、血圧の調整、体内のイオンバランスの維持、骨の形成などに関わっています。
とても大切な臓器ですね。
糖尿病性腎症では自覚症状としてむくみ、貧血様症状などがあります。その他だるさ等を感じることがあります。
進行し腎臓の機能が著しく低下した場合には透析を受ける必要があります。
※透析とは腎臓の働きを補う医療行為です。
糖尿病性神経障害
三大合併症の3つめは「糖尿病性神経障害」です。
網膜症と糖尿病性腎症と比べてイメージしづらいかもしれません。
症状は足や手が冷たいしびれ、痛み、触っても感覚がないなどです。
また、自律神経障害によってめまい、吐き気、嘔吐、便秘、下痢などの症状が出ることもあります。
その他の合併症
代表的な慢性合併症である糖尿病網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害についてみてきました。
糖尿病患者の慢性的な血糖コントロール不良は三大合併症以外の病気のリスクファクターにもなります。
ここではその他の合併症について挙げていきます。
糖尿病性足病変
糖尿病性足病変にはいわゆる水虫をはじめとして足の指や足の変形、足壊疽(足が腐ってしまう状態)まで含まれます。
原因は糖尿病による神経障害と考えられています。血糖コントロール不良が長く続くことで神経障害が起き、その後足病変が起こりやすくなります。
足壊疽までには「足にできた傷がなかなか治らない」「足が異常に冷たい」「足の痛みを感じない」といった症状が出ることがあります。この段階でしっかりケアできれば足壊疽を防げる可能性があります。
動脈硬化性疾患
動脈硬化性疾患には心筋梗塞や、脳梗塞などの脳血管障害が含まれます。
この動脈硬化性疾患に関しては糖尿病の症状が比較的軽い場合にもリスクは増加します。
骨折、歯周病、認知症
血糖コントロール不良の状態が続くことで骨折、歯周病、認知症のリスクも高まるとされています。
認知症については糖尿病患者ではアルツハイマー型認知症が1.5倍、脳血管性認知症が2.5倍とその他の人と比べて多いです。
まとめ
最後まで読んでいただきありがとうございます。
いかがでしたでしょうか。
糖尿病の合併症はどれも生活の質(QOL)を著しく低下させるものばかりです。
対策は血糖コントロールを続けることです。
糖尿病の治療の目的は血糖をはじめとし、血圧、脂質代謝のコントロールにあります。
そして適正体重の維持、禁煙を続けることで今回紹介した合併症を発症、進展させないことにあります。
気になる症状がある場合はすぐに受診(糖尿病と診断されれば早期に治療開始できる、診断されなければ一旦安心できるといいことばかりです)、そして実際に治療を開始した場合には処方された薬をきちんと使用することはもちろん、食事療法および運動療法にも積極的に取り組むことが合併症の発症・進展阻止につながります。
ちなみに筆者の考えとして糖尿病を「治る」とは言いません。糖尿病が「治る」とはどういうことかについては下記の記事で書きました。
→糖尿病は治る時代?結局治るのか。そもそも糖尿病の「治る」とは。