糖尿病の人が食べちゃダメなものはある?【糖尿病・食事療法】

糖尿病
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※2型糖尿病に関する記事です。

糖尿病治療の基本であり、誰でも今日から取り組むことのできる食事療法。

食事は体にエネルギーを取り込む行為。取り込むエネルギーの量、質を意識することで糖尿病の数値の改善を目指すのが食事療法です。。

今回はこの食事療法の内容を踏まえた上で生じる「食べちゃダメなものはある?」という疑問を解決します。

この記事を制作するにあたり「日本糖尿病学会 編・著 糖尿病治療ガイド2020-2021 文光堂」を参考にしました。

※現在既に2型糖尿病治療をされている方は、食事療法を行なうにあたり自己判断で開始せず、主治医の指示を仰ぎましょう。

また、今回の記事でもそうですが、筆者の考えとして糖尿病に対して「治る」という言葉は使いません。そのあたりの考えについては下記記事に書きました。
糖尿病は治る時代?結局治るのか。そもそも糖尿病の「治る」とは。

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糖尿病の人が食べちゃダメなものはある?

糖尿病と診断されると気になるのが毎日の食事ですよね。食事は毎日行なうものであり、食事療法は糖尿病治療の基本でもあります。

糖尿病と診断されて気になるのは

「もう甘いものは食べちゃダメなの?」
「お酒は?ラーメンは?」

といったことだと思います。

実際に薬剤師として保険薬局で働いていても、食事に関する質問は多いです。

さっそく結論から言うと

絶対食べちゃダメなものはない!だけど・・・
※肝疾患や合併症など問題のある場合は禁酒

です。

結論に至る理由を解説するためにまずは食事療法について見ていきましょう。

その前にこの項では糖尿病という病気について記載します。次の項で食事療法について見ていきましょう。

糖尿病とは

糖尿病とはインスリンの作用不足による慢性の高血糖状態を主な特徴とする病気(代謝疾患群)です。

糖尿病には1型糖尿病2型糖尿病があります。

1型糖尿病は遺伝素因等何らかの原因でインスリンを合成・分泌する膵臓(すいぞう)の細胞が破壊され、絶対的なインスリン欠乏に至る病気です。

一方2型糖尿病は、インスリン分泌低下やインスリン抵抗性を生じさせる遺伝因子に、過食(とくに高脂肪食)、運動不足、肥満、ストレスなどの環境因子および加齢が加わり発症します。生活習慣病と認識され、国民病とも言われている糖尿病はこの2型糖尿病のことであり糖尿病全体の90%以上は「2型糖尿病」です。

また、今回の記事も2型糖尿病に関するものです。

糖尿病は自覚症状に乏しいことで知らないうちに進行してしまうというのが怖いところですが、典型的な初期症状というのはやはりあります。
糖尿病の症状については下記記事で解説しましたのでこちらも参考にしてみてください。
糖尿病かも?そんな時は7つの症状をチェック

1.膵臓(すいぞう)からのインスリン分泌の遅延・低下
2.インスリンの効きが悪くなる(インスリン抵抗性の増大)

であり、これにより血糖値の高い状態が続くことで血管を傷つけます

結果として三大合併症の網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害という重篤な合併症を引き起こす病気です。

また、これ以外にも心臓の病気、歯周病、認知症のリスクも上がると考えられています。

糖尿病治療の目標は、合併症の発症や進行を阻止することです

そのために血糖、血圧、コレステロール値、体重などをコントロールする必要があります。

合併症については下記の記事で詳しく解説しておりますのでこちらも是非ご参考にしてみてください。

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糖尿病治療における食事療法

食事療法とは

糖尿病の発症に深く関わっているインスリンは通常時にも分泌されていますが、食事でエネルギーを摂取した後には特に多く分泌されます。

インスリンを分泌する膵臓(すいぞう)に負担をかけないために、過剰なエネルギー摂取を避けることが食事療法の最大の目的です。

言い換えるとインスリンが処理しきれないほどのエネルギー(ブドウ糖)を食事で体内に入れないようにするということです。

食事で取り込むエネルギーの量、質を意識することで糖尿病の数値の改善を目指すのが食事療法です。

食事療法の目標は下記です。

<目標>
1.食事は腹八分目までにしよう
2.摂取する食品の種類をできるだけ多くしよう
3.動物性脂質は控えめにしよう
4.食物繊維を多く含む食品を積極的に食べよう
5.朝昼晩、規則正しく食べよう
6.ゆっくりよく噛んで食べよう
7.果物・お菓子(チョコとか)の間食を避けよう

食事療法における具体的な摂取目標

量(エネルギー摂取量)

目標のエネルギー摂取量は下記の色で決定します。

エネルギー摂取量=目標体重 x エネルギー係数

・目標体重
目標体重は下記のように決定します。

65歳未満 →[身長(m)2]x22 
65~74歳 →[身長(m)2]x22~25
75歳以上  →[身長(m)2]x22~25

目標体重と現体重があまりにもかけはなれている場合には柔軟に。肥満者の場合はまず3%の体重減少を目指しましょう。

75歳以上では医療スタッフに現体重に基づき総合的に諸数値を評価した上で適宜判断してもらいましょう。

・エネルギー係数
エネルギー係数は普段身体をどのくらい動かすかで決めます。

大部分が座ったままの静的活動   25~30 kcal
座っての活動が中心だが通勤・家事、軽い運動を含む  30~35 kcal
力仕事、活発な運動習慣がある   35~ kcal

質(栄養素の構成)

三大栄養素の構成比率は一般的には下記のように設定します。

炭水化物  40~60%
タンパク質 20%
脂質    ~25%
(25%を超える場合には、飽和脂肪酸を減じるなど脂肪酸組成に配慮する)

炭水化物・・・ご飯、パン、じゃがいもなど
タンパク質・・・魚、肉、大豆、卵など
脂質・・・バター、マヨネーズ、油など

三大栄養素以外にも注意したい項目があります。塩分やアルコール、食物繊維などの摂取量にも気を配りましょう。

・塩分摂取量

高血圧発症前 男性:~7.5g/日、女性~6.5g/日
高血圧合併の場合  ~6.0g/日

・アルコール

25g/日程度まで
(肝疾患や合併症など問題のある場合は禁酒)

・食物繊維

20g以上/日

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絶対食べちゃダメなものはない!だけど・・・?

さて、前述の通り結論は「絶対食べちゃダメなものはない!だけど・・・」です。
(ただし肝疾患や合併症など問題のある場合は禁酒です。)

ここでは食事療法の中身と照らし合わせながら、だけど・・・の続きについて考えていきましょう。

糖尿病治療における食事療法では糖質の多いもの(チョコとか洋菓子)や塩分の多いもの(カップラーメンなど)は控えましょうというのが通例です。糖質の多いものは血糖値の急激な上昇の原因になるから、塩分の多いものは高血圧の原因となるためです。

ですが絶対食べないというのはなかなか辛いものですよね。

ではどんな考え方をしたら良いか。例を出して考えてみましょう。

唐突ですが、カップラーメンをどうしても食べたいとします。

1971年に発売されて以来長く愛され続けている世界初のカップめん、日清のカップヌードルの醤油味を例にすると、普通サイズで食塩相当量は4.9g(めん、かやく:2.4g、スープ:2.5g)とのことです。

こちらを食べたとして食塩相当量4.9g、あとは1日何も食べなければ数値目標達成!ということになるでしょうか?

塩分摂取量の目標は確かに達成していますが食事療法の目標の中の下記3つ

2.摂取する食品の種類をできるだけ多くしよう
4.食物繊維を多く含む食品を積極的に食べよう
5.朝昼晩、規則正しく食べよう

これは達成できていません。

この場合の最善策を考えると、まずスープを飲まないことで塩分2.5gを摂取しない、もしくは我慢できなければスープを1/3だけ飲まずに塩分摂取を約0.8g減らすことで塩分摂取量を減らす。

そのうえで1日3食食べるけど他の2食では塩分を極力抑えつつ、食物繊維をなるべく多く摂るようこころがける。というのが良さそうです。

上の例からもわかるように、とにかく食事は毎日することです。無理な食事療法は続けることが難しいし、達成できない日が続けばそのことが諦めにつながってしまう可能性もあります

柔軟に、だけどトータルで広くみれば目標はまぁまぁ達成できている。こういうところを目指していくのがベストなのではないでしょうか。

例えば

チョコレートを食べた日の夜の食事では脂質を減らすよう努める。
誕生日ケーキを食べた日の夜の食事では脂質を減らすよう努める。

こういう小さな意識と小さな努力が食事療法の本質だと思うし、これを続けていくことで達成感が持てて、治療に対しても前向きに考えられることができれば運動療法薬物療法に対する考え方も変わってくると思います。ひいては糖尿病治療をきちんと行い健康な人と変わらない寿命を獲得できることに繋がります。

もちろん1日3食、1食ずつきちんとバランスよく食事することが理想ではありますが、私だったら続かないかなと思います。できない目標を掲げて挫折するよりもできる目標を確実に、長い期間達成し続けていくのが良いのではないでしょうか。

言うまでもないですが意思の強い方は1食ずつバランスよく、食物繊維も豊富に摂ることに取り組むことがベストです。

以上をまとめると

「絶対食べちゃダメなものはない。だけど食べると栄養バランスが崩れてしまったり、急激な血糖上昇の原因になる食べ物もある。そういう食べ物を食べた時は他の食事でカバーしよう」

です。

まとめ

最後まで読んでくださりありがとうございます。

いかがだったでしょうか。

糖尿病の患者さんが絶対食べちゃダメなものはないです。しかし食事療法に取り組む意識を持ち続けることは大切です。

柔軟に、長く続く目標をたてて取り組んでみてください。

※現在既に2型糖尿病治療をされている方は、食事療法を行なうにあたり自己判断で開始せず、主治医の指示を仰ぎましょう。

糖尿病の運動療法、食事療法、薬物療法については下記記事でそれぞれ解説しています。こちらも参考にしてみてください。

食事療法
糖尿病の食事療法は7項目を意識しよう。ガイドラインを軸に解説

運動療法
糖尿病予防には運動が効果的。運動療法の効果・やり方を詳しく解説

薬物療法
糖尿病の治療薬、8種類+インスリン。薬剤師が全て解説

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