糖尿病予防には運動が効果的。運動療法の効果・やり方を詳しく解説

糖尿病
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今や国民病とも言われる糖尿病。患者数は年々増え続けており、糖尿病の可能性を否定できない人は1,000万人を超えるとも言われています。

そんな糖尿病の治療は基本的に食事療法、運動療法、薬物療法の三本立てです。

このうち食事療法運動療法には糖尿病を予防する効果も期待できます。
今回は運動療法にフォーカスし、その具体的なやり方を紹介します
是非最後まで読み進めてみてください。

食事療法と薬物療法については下記の記事をご覧ください。

食事療法
糖尿病の食事療法は7項目を意識しよう。ガイドラインを軸に解説

薬物療法
糖尿病の治療薬、8種類+インスリン。薬剤師が全て解説

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糖尿病予防には運動が効果的。運動療法の効果・やり方を詳しく解説

糖尿病には運動が効果的」ということを知っている人は多いと思います。治療の一環として運動している人、予防のために運動している人もいるかと思います。

実際に運動療法は代謝改善に効果的です。今回は糖尿病予防に効果的な運動療法、その効果や具体的なやり方について詳しく解説します。

まずは糖尿病について。

糖尿病とは

糖尿病とはインスリンの作用不足による慢性の高血糖状態を主な特徴とする病気(代謝疾患群)です。
糖尿病には1型糖尿病2型糖尿病があります。

1型糖尿病は遺伝素因等何らかの原因でインスリンを合成・分泌する膵臓(すいぞう)の細胞が破壊され、絶対的なインスリン欠乏に至る病気です。

一方2型糖尿病は、インスリン分泌低下やインスリン抵抗性を生じさせる遺伝因子に、過食(とくに高脂肪食)、運動不足、肥満、ストレスなどの環境因子および加齢が加わり発症します。生活習慣病と認識され、国民病とも言われている糖尿病はこの「2型糖尿病」のことであり糖尿病全体の90%以上は「2型糖尿病」です。今回の記事も2型糖尿病に関するものです。

症状は

1.膵臓(すいぞう)からのインスリン分泌の遅延・低下
2.インスリンの効きが悪くなる(インスリン抵抗性の増大)

であり、これにより血糖値の高い状態が続くことで血管を傷つけます

もし早期に発見し、食事療法、運動療法、薬物療法などで血糖値をコントロールすることができれば、血管の消耗が抑えられます。早ければ早いほど血管の消耗を防げます

高血糖状態が続き長期に渡り血管に負担がかかると、結果として糖尿病三大合併症の網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性神経障害という重篤な合併症を引き起こす病気です。

また、これ以外にも心臓の病気、歯周病、認知症のリスクも上がると考えられています。

糖尿病治療の目標は、合併症の発症や進行を阻止することです。

そのために血糖、血圧、コレステロール値、体重などをコントロールする必要があります。

糖尿病の合併症については下記の記事でまとめました。
糖尿病の合併症を解説。三大合併症は目、腎臓、神経の病気。

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運動療法における運動には2種類ある

それではいよいよ運動療法についてみていきます。

まずは運動の種類から。

運動療法において運動は「有酸素運動」と「レジスタンス運動」の2種類に分けて考えます

有酸素運動

有酸素運動とは酸素の供給に見合った強度の運動のことでで、継続して行なうことによりインスリン感受性が増大します。歩行、ジョギング、水泳などの全身運動が該当し、心肺機能を高める効果があります。

レジスタンス運動

レジスタンス運動とは、おもりや抵抗負荷に対して動作を行なう運動で、強い負荷強度で行えば無酸素運動に分類されますが、筋肉量を増やし、筋力を増強する効果が期待できます。ジムで行なう重量挙げやダンベルプレスなどはこちらに該当します。

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運動のやり方

次に実際のやり方です。

有酸素運動は中強度で週に150分かそれ以上、回数は週3回以上、運動をしない日が2日続かないように行なう。

中強度とは、運動中の心拍数が50歳未満で100~120拍/分未満、50歳以上では100拍/分未満となる程度です。
個々人の「楽だ」「ちょっときつい」といった体感を目安にしても良いでしょう。

運動療法と聞いて真っ先に浮かぶのはアスリートのような激しい走り込み等かもしれません。しかし、有酸素運動においてはこのような「きつい」と感じる運動は強度が高すぎる運動なので適切ではありません。

もっと楽な運動でいいのです。

歩行運動を例にあげると、1回15~30分間、1日2回、1日の歩数は約1万歩程度が望ましいとされています。

レジスタンス運動は週に2~3回行ない、2日間以上続かなように行なうのが良いとされています。

有酸素運動とレジスタンス運動を組み合わせたスケジュールの例です。結構大変ですね。

スケジュール例

月火水木金土日

有レ有レ有レ有
有有レ有レ有レ
レ有 有レ有有

その他

・運動持続時間は、糖と脂肪酸の効率のよい燃焼のために20分以上の持続が望ましいとされています。
・特別に運動療法を実施する時間がない場合は、日常生活行動によりエネルギー消費を増やしましょう。例えば階段を使う、通勤時に歩行するなどの運動を日常生活に取り入れることが可能です。
・高齢者糖尿病においては、バランス能力を向上させるバランス運動は生活機能の維持・向上にも効果的です。例えば片足立ちなどです。

運動療法による大きなメリットは2つ

それでは次に運動療法のメリットについてみていきます。
たくさんのメリットがありますが、特に大きな、重要なメリットは2つです。

1.運動中、運動直後の効果としてブドウ糖、脂肪酸の利用が促進され血糖値が低下する
2.運動を長期間続けると筋肉量の増加、インスリン抵抗性改善が期待できる

運動をするとエネルギーの利用が促進され血糖値が下がる。
さらに長期間継続することで筋肉量が増え、インスリン抵抗性も改善する。
良いことばかりですね。
ざっくりまとめると「代謝が良くなる」ということです。

その他にも以下のようなメリットがあります。

・心肺機能が良くなる
・運動能力が向上する
・ストレス解消
・加齢や運動不足による筋萎縮や骨粗鬆症の予防に有効
・減量効果がある

運動療法を行なう際の注意事項

運動療法を実践するにあたり注意事項がいくつかあります。下記箇条項目は運動療法の開始前にチェックしましょう。

・個々人にとって適切な運動の「種類」「強度」「時間」「頻度」を決定する。最初は走らずウォーキングから始めるなど工夫し、徐々に運動量を増やしていくようにしましょう。

・運動療法は継続性が重要であるので、好きな運動を取り入れるなど運動の楽しさを実感できるよう工夫しましょう。

・心血管疾患リスクの高い方(脂質異常症や高血圧に罹患している方、喫煙者等)は医師によるチェックに基づき運動の可否を決定しましょう。

・運動により血圧上昇や頻脈が誘発されることがあるため、安全管理の面からも運動前後や運動中の脈拍数、血圧の測定が大切です。

・糖尿病患者においては血糖コントロールが不安定な時は運動強度は控えめに、運動時間も短めにしましょう。

・インスリン注射やインスリン分泌促進薬で糖尿病の治療を行なっている方は、低血糖になりやすい時間(薬が一番効く時間)があるのでその時間の運動は避けるようにしましょう。

下記の場合は運動療法を制限する、または専門家に可否を判断してもらってください。

・糖尿病の代謝コントロールが極端に悪い場合(空腹時血糖値が250mg1/dL以上、または尿ケトン体中東度以上陽性)

・増殖前網膜症以上の症状(眼科医と相談する)

・腎不全の状態にある場合(専門医の意見を求める)

・虚血性心疾患や心肺機能に障害のある場合(専門の医師の意見を求める)

・骨・関節疾患がある場合(専門の医師の意見を求める)

・急性感染症

・糖尿病壊疽

・高度の糖尿病性自律神経障害

運動したら食べてもいいの?

気になるのが「運動してカロリーを消費したらその分食べても問題ないの?」という点。

これに関しては残念ながら「NO」です。

運動による効果はインスリン感受性の改善が主であり、消費するカロリーはそれほど多くないからです。

体重60kgの人が100kcal消費する運動を下に示します。運動で消費するエネルギーがそれほど多くないことがわかると思います。

散歩 30分程度
ウォーキング(速歩き) 25分程度
自転車(平らな道) 20分程度
ランニング 10分程度
水泳(クロール) 5分程度

まとめ

最後まで読んでいただきありがとうございます。

いかがでしたでしょうか?

今回は代謝の改善に効果抜群の運動療法について紹介しました。

ポイントは個々人に合った運動量、時間で長く続けていくことです。

有酸素運動においては「きつい」と感じる程負荷をあげる必要がないので、「これなら継続できる」と思えた方も多いのではないでしょうか。

いずれにしても無理せず適度な運動を継続的に行なうことで代謝を良くするのが運動療法の目的です。

糖尿病の予防や治療のために是非運動療法を実践してみてください。

糖尿病の治療は基本的に食事療法、運動療法、薬物療法の三本立てです。
食事療法、薬物療法については下記の記事で解説しています、こちらも是非ご覧ください。

食事療法
糖尿病の食事療法は7項目を意識しよう。ガイドラインを軸に解説

薬物療法
糖尿病の治療薬、8種類+インスリン。薬剤師が全て解説

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