いまや国民的痛み止めといっても過言ではないロキソニンSシリーズ。
頭痛・生理痛がある時にはとりあえずロキソニンを服用するという方も多いのではないでしょうか。
今回はこの市販薬ロキソニンSシリーズ製品の値段・成分等違いを徹底比較しました。ロキソニンSシリーズ購入時に参考にしてみてください。中には眠気に注意すべき商品もあります。
※服用時には製品パッケージに記載の注意事項をよく読み自分が飲んでも大丈夫なのか確認の上、用法用量を守って正しく服用しましょう。
ロキソニンの概要
まずはロキソニンの概要からです。
ロキソニンSシリーズに含有されているロキソプロフェンナトリウム水和物は、元々は1986年に医療用医薬品 ロキソニン錠 として日本で発売されました。
このロキソプロフェンナトリウム水和物は非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)と呼ばれる成分の一種で、第一三共株式会社(旧・三共株式会社)により創製されたものです。
ロキソニンも分類されるこの “NSAIDs” とはどんな成分、薬効なのでしょうか?
NSAIDsは、体内で酵素の一種であるシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害することでプロスタグランジン(PG)という生理活性物質の生成を阻害し作用を発現します。
〜シクロオキシゲナーゼ(COX)について〜
酵素であるCOXは炎症(筋肉痛とか)による発現だけでなく、胃や腎臓、その他の部位でも常に発現しており、COXを阻害すると抗炎症作用を示すのと同じように、胃腸などCOXが発現している場所へも作用することがあります。
文章で書いてもわかりづらいので、わかりやすいところで効果や副作用について。
効果としては解熱鎮痛。熱を下げたり痛みを緩和したりする作用です。
副作用としては主に胃腸障害や腎機能障害があります。
副作用の胃腸障害や腎機能障害がは、上に書いた通り胃や腎臓にもCOXが発現しているために起こることがあるのです。
ロキソニンの歴史に戻ります。
ロキソニンが医療用医薬品として広く使われたのち、2011年1月21日に商品名「ロキソニンS」として市販薬での販売が開始されました。
主成分ロキソプロフェンナトリウム水和物が医療用ロキソニンと同量入っていて、効果も医療用のロキソニンと同等という商品です。
ロキソニン販売開始以前よりNSAIDsを主成分とする市販薬はすでに発売されており、有名なところでいうとイヴAの主成分「イブプロフェン」やバファリンAの主成分「アセチルサリチル酸」もNSAIDsです。
強さについてはロキソニンは内服で使われているNSAIDsの中では効果が強く、市販薬の中では最強です。
ドラッグストア勤務中も、「ロキソニンS」はとにかくよく販売した記憶があります。痛み止めの中ではダントツに売れていたと記憶しています。
その後「ロキソニンS」はシリーズ化され、2015年6月22日に胃に優しい成分を配合した「ロキソニンSプラス」、2016年4月11日には鎮痛効果を高める成分を配合した「ロキソニンSプレミアム」が発売されました。
さらに2021年8月、「0.1秒でも速く」というコンセプトで錠剤崩壊までがシリーズ商品の中で最も速い「ロキソニンSクイック」が発売されました。
今回はNSAIDs成分「ロキソプロフェンナトリウム水和物」含有の人気市販薬 ロキソニンSシリーズ の価格・成分等を徹底比較しました。
その前に基本事項です。
ロキソニンSシリーズの効能・効果、用法・用量、注意事項等は以下の通りです。
効能・効果
●頭痛、月経痛(生理痛)、歯痛、抜歯後の疼痛、咽頭痛、腰痛、関節痛、神経痛、筋肉痛、肩こり痛、耳痛、打撲痛、骨折痛、ねんざ痛、外傷後の鎮痛
●悪寒、発熱時の解熱
用法・用量
成人(15歳以上)・・・1日2回まで。症状があらわれた時、なるべく空腹時をさけて服用してください。ただし、再度症状があらわれた場合には3回目を服用できます。(服用間隔は4時間以上おいて下さい)
次の人は服用しないでください。
(1)本剤又は本剤の成分によりアレルギ一症状を起こしたことがある人
(2)本剤又は他の解熱鎮痛薬、かぜ薬を服用してぜんそくを起こしたことがある人
(3)15歳未満の小児
(4)医療機関で次の治療を受けている人 胃・十二指腸潰瘍、肝臓病、腎臓病、心臓病
(5)医師から赤血球数が少ない(貧血)、血小板数が少ない(血が止まりにくい、血が出やすい)、白血球数が少ない等の血液異常(血液の病気)を指摘されている人
(6)出産予定日12週以内の妊婦
・本剤を服用している間は、次のいずれの医薬品も服用しないでください。
他の解熱鎮痛薬、かぜ薬、鎮静薬、乗物酔い薬
(※ロキソニンSプレミアムのみ)
・服用後、乗物又は機械類の運転操作をしないでください。(眠気等があらわれることがあります)
(※ロキソニンSプレミアムのみ)
・長期連続して服用しないでください。
(3~5日服用しても痛み等の症状が繰り返される場合には、服用を中止し、医師の診療を受けてください。)
※ロキソプロフェンナトリウム水和物を服用すると、稀に副作用として胃の不調がでることがあるため<用法・用量>に「なるべく空腹時をさけて」という記載があります。また、商品パッケージに記載されている注意項目の「次の人は服用しないでください」の欄に「胃・十二指腸の治療を受けている人」という記載があります。
市販薬ロキソニンSシリーズの価格・成分などの比較
お待たせしました。ここからは市販薬ロキソニンSシリーズ各商品の価格等の比較です。まずは比較表です。
以下ではそれぞれの商品について解説していきます。
ロキソニンS
市販薬ロキソニンSシリーズでもっとも最初に発売されたのが「ロキソニンS」です。
発売日は2011年1月21日。 成分「ロキソプロフェンナトリウム水和物」が、痛みや熱の原因物質をすばやく抑え、すぐれた鎮痛効果・解熱効果を発揮します。成分はロキソプロフェンナトリウム水和物だけというシンプルな処方。
眠くなる成分(鎮静催眠成分)を含まず、胃への負担が少ないプロドラッグ製剤です。(※プロドラッグ製剤とは、成分が体内で吸収されてから活性型に変化し、効果を発揮する仕組みの製剤です。)
参考・【雑学】プロドラッグって何?市販薬ロキソニンSも実はプロドラッグ
価格は12錠入りで713円。1錠あたり59円。
ロキソニンSプラス
次に発売されたのが「ロキソニンSプラス」です。
発売日は2015年6月22日で、従来の「ロキソニンS」に胃にやさしい成分「酸化マグネシウム」をプラスした製品です。
ロキソプロフェンナトリウム水和物を服用すると稀に副作用として胃腸障害がでることがあります。この対策として胃にやさしい成分が配合されました。
酸化マグネシウムは、医療用では便秘改善の目的で1回250mg~500mg程度服用の下剤として広く使われています。これは酸化マグネシウムの「便に水分を多く含ませて便を柔らかくする作用」を利用したものです。
これに対して今回の「ロキソニンSプラス」に配合されている酸化マグネシウムは1回33.3mg。今回の処方目的は胃での制酸作用だと考えられます。酸化マグネシウム(MgO)と胃内の胃酸(HCl)が反応し中和されることで制酸作用を示します。
(MgO+2HCl→MgCl2+2H2O)
価格は従来のロキソニンSと比較すると少しだけ上がり768円(12錠入り)。
ロキソニンSプレミアム
シリーズの中で最強とされているのが「ロキソニンSプレミアム」です。
発売日は2016年4月11日。
ロキソプロフェンナトリウム水和物の鎮痛効果を高める成分、胃にやさしい成分を同時配合した、効果がもっとも強く胃にもやさしいというプレミアムな処方。
12錠入りと24錠入りが販売されており、メーカー希望小売価格(10%税込価格)はそれぞれ768円、1,298円です。
24錠入りがお得ですね。
プレミアムな処方ですがシリーズの他の製品にはない注意事項があります。
それは眠気が出る可能性があるということです。実際に商品パッケージに記載されている注意項目に「服用後、乗物又は機械類の運転操作をしないで下さい。」と記載されています。これは「ロキソニンS」「ロキソニンSプラス」にはない記述です。
眠気がでる可能性があると使いづらそうに感じますが、「痛くて眠れない」という場合には「眠気が出る可能性がある」というのはむしろ良い特徴かもしれません。(もちろん眠れないほど痛い場合にはできるだけ速やかに受診をしてください)
配合成分についてはアリルイソプロピルアセチル尿素、無水カフェインが鎮痛補助・作用増強の目的。
そして制酸作用目的のメタケイ酸アルミン酸マグネシウム100mg配合で胃に優しい処方となっています(ロキソニンSプラスの酸化マグネシウムの代わり)。
ちなみに先に述べた “眠気” を誘発するのはアリルイソプロピルアセチル尿素です。
ロキソニンSクイック
最後に紹介するのは最も最近登場した商品「ロキソニンSクイック」です。
その名の通りクイック(速い)という長所のある商品です。錠剤崩壊までの時間がシリーズ最短ということで、他のロキソニンよりも即効性が期待できます。
また、胃を守る成分メタケイ酸アルミン酸マグネシウム100mg配合で、「ロキソニンSプラス」や「ロキソニンSプレミアム」と同様胃に優しい処方となっています。
結局どれがいい?
最後まで読んでくださりありがとうございます。
いかがだったでしょうか?
今回は市販薬の痛み止め「ロキソニンSシリーズ」について紹介しました。
シンプルなのは「ロキソニンS」
胃にやさしいのは「ロキソニンSプラス」
もっとも鎮痛効果が強いとされるのが「ロキソニンSプレミアム」
即効性を期待するなら「ロキソニンSクイック」
でした。(ロキソニンSプレミアムでは眠気に注意です!)
どの商品が良いかは、それぞれの体質、状況によります。
今回の記事をご自身に合ったものをチョイスするにあたっての参考にいただければと思います。
筆者個人の見解ですと、①安価であること ②医療機関からロキソニン単剤で処方されることが少なくないといった理由から、ロキソニンSが最も良いのではないかと思います。
注意点としてはやはり胃腸障害です。ロキソニンSを服用する際にはなるべく(極力)食後に服用することが望ましいです。
また、シリーズの他の商品にも優位性はあります。胃が極端に弱い方はやはりロキソニンS以外の胃を守成分が配合されていた方が安心でしょう。
また、ほんの少しでも痛み止めの効果が強いものを求める方も実際にドラッグストアで勤務した経験上かなり多いです。そんな方にはやはりロキソニンSではなくロキソニンSプレミアムをおすすめします。
効果発現の速さについても同様です。1分1秒でも早く効いてほしいという方にはロキソニンSクイックをおすすめします。
まとめると、大きなこだわりがない場合はロキソニンSで良い。個別に強い希望がある場合には他の商品を考慮するというのが筆者の考えです。
また、授乳中は別の痛み止めを推奨します。授乳中の痛み止めについては下記記事を参考にしてください。
→授乳中に使える市販薬の痛み止めはタイレノール!ロキソニンは?
※服用時には製品パッケージに記載の注意事項をよく読み自分が飲んでも大丈夫なのか確認の上、用法用量を守って正しく服用しましょう。
ロキソニンについては他にも記事がありますので下記記事も是非参考にしてみてください。