今回は女性の脱毛症について解説していきます。
男性では男性特有のAGA(男性型脱毛症)がよく知られていますが、女性には女性特有の病態があります。
今回の記事を女性の脱毛症への理解を深めるための参考にしていただけると幸いです。
女性特有の脱毛症FPHLとは
女性の脱毛症を総称してFPHL(Female Pattern Hair Loss:女性型脱毛症)といいます。
この中で特に多いのがFAGA(女性男性型脱毛症)と呼ばれるものです。
これまでは女性の脱毛症=FAGAというイメージがありましたが、FAGAの病態だけで女性の薄毛を説明できないことも多く、近年前述の通り女性の脱毛症のことを総称してFPHL(Female Pattern Hair Loss:女性型脱毛症)と呼ぶようになりました。
女性特有の脱毛症としてFAGA以外にも分娩後脱毛症などがあります。
FAGA及び分娩後脱毛症はいずれも女性特有のホルモンバランスの変化が脱毛の原因といわれています。
その他、突発的にコインのような形に脱毛する円形脱毛症、過剰な皮脂が原因となる脂漏性脱毛症もFPHLの1つです。
FPHLの症状
FPHLの最も一般的な症状の特徴として、全体的に髪が薄くみえるようになります。男性によくみられるいわゆる「M字ハゲ」や頭頂部がツルツルになるといった症状とは異なります。
もちろんFPHLで全員がこうした症状となるわけではなく、これ以外の症状の場合もあります。
FPHLの原因
FPHLの原因として
加齢による細胞の機能低下
遺伝
ストレス
生活習慣の乱れ
喫煙
加齢によるホルモンバランスの変化
過度のヘアケアによる頭皮環境の悪化
過度のダイエット
疾患
などが挙げられます。
特に「加齢によるホルモンバランスの変化」、「過度のヘアケアによる頭皮環境の悪化」、「過度のダイエット」は女性特有と言えそうですね。
これらが原因となってヘアサイクルに乱れが生じ、結果として脱毛症となります。
また、貧血による鉄欠乏や、男性よりも女性に多いバセドウ病などの甲状腺疾患、そしてそれ以外の疾患によっても脱毛が起きる可能性があります。
疾患が原因で脱毛が起きている場合には疾患自体の治療が必要となるため注意が必要です。
ヘアサイクルとは
髪の毛には「ヘアサイクル」と呼ばれるライフサイクルがあります。
髪が生え、成長し、抜け落ち、そして再び生えてくる一連のサイクルのことです。
髪には寿命があり、寿命を迎えた髪は抜け落ち、そして新しい毛が生えてくるのです。
一生で15~30回ほどのヘアサイクルを繰り返すといわれており、1サイクルがおよそ3~6年程度です。
ヘアサイクルの回数に上限があるということが、一般に加齢により髪の量が減る傾向にある理由の1つです。
ヘアサイクルは「成長期」「退行期」「休止期」の3つのステージに分かれています。
成長期
成長期の期間は人により異なりますがおよそ3~6年です。
この期間に毛は誕生し、長く、そして太くなります。
成長期の期間が長いほど髪の毛は太くなります。
長さについては定期的な散髪があるため実感しづらいですが、1年でおよそ15cm程度伸びます。まさに毛が成長する期間です。
成長期の最初期、毛根部という場所で、新しい髪の毛が誕生します。
そして、休止期の最終盤を迎えた古い髪の毛が、新しい毛に押し出され抜けていきます。
成長期は毛母細胞の活動(細胞分裂)が活発な時期であり、新しい髪の毛はそれによりどんどん成長します。
なお毛髪全体の85~90%が成長期の髪です。
退行期
退行期の期間はおよそ2週間です。成長期の次の段階です。
成長期で成長した毛が、休止期に移行する過程の時期です。
退行期には毛乳頭細胞が毛母細胞から離れます。
毛母細胞の活動には、毛乳頭細胞からのシグナルや栄養が必要です。
毛乳頭細胞が毛母細胞から離れることでこれらが弱まり、したがって髪が成長しづらくなります。
毛母細胞の活動は衰え、毛球が退縮する時期です。
毛髪全体の1%がこの退行期の髪です。
休止期
休止期はヘアサイクルの最後の期間です。期間は3~4ヶ月です。
この時期には髪の成長が完全に止まります。
そして毛根部では、新たな毛が生える準備を始めている時期でもあります。
最終的には新しい毛に押し出されるかたちで自然と毛が抜け落ちます。
毛髪全体の10%~20%が休止期の髪です。
ヘアサイクルが乱れる原因は?
ここではヘアサイクルが乱れる原因について、その理由とともに解説していきます。
ストレスとヘアサイクル
仕事の疲れなど、日常生活でストレスを受けると、一般に血行不良の傾向になります。これはストレスを受けた際に交感神経優位の状態になるためです。自律神経のうち交感神経とは、興奮・緊張などする際に優位になるもの、一方副交感神経は寝る直前やリラックスしている際に優位になるものです。
交感神経が優位になった結果、血管が収縮し、血行が悪化します。
血行不良の状態では毛母細胞に栄養が十分に供給されず、毛母細胞の活動が低下するため、ヘアサイクルの乱れ、ひいては薄毛の原因となります。
生活習慣の乱れとヘアサイクル
食生活の乱れ、睡眠不足、喫煙などの生活習慣の乱れもヘアサイクルの乱れの原因となります。
睡眠不足では成長ホルモンの分泌が滞り、したがってヘアサイクルの乱れを招きす。成長ホルモンは正常なヘアサイクルの維持に必要なホルモンです。
喫煙による血管収縮、外食、コンビニ食が多いといった食生活の乱れにおいてはそれによる栄養不足がそれぞれヘアサイクルの乱れの原因となります。
髪の生成に必要な栄養成分として、髪の主成分となるタンパク質、ビタミンなどが挙げられます。ビタミンの中でもビタミンB2やB6は、代謝促進に関わります。また、ビタミンEは血行促進に関わっています。
頭皮環境の悪化とヘアサイクル
頭皮の乾燥やその反対に油分が過剰分泌している状態は毛根部にとって良い環境とはいえません。この状態が続くとヘアサイクルの乱れにつながる可能性があります。
例えばシャンプーをはじめとしたヘアケアにおいて刺激の強すぎるものは使っている場合には頭皮環境の悪化につながる可能性があります。
特に女性においては過度なヘアケアも頭皮環境の悪化につながるおそれがあります。
加齢とヘアサイクル
加齢による細胞自体の機能低下もヘアサイクルの乱れの原因となります。この場合は毛母細胞ですね。
代表的なFPHL① FAGA(女性男性型脱毛症)
薄毛で悩まれている女性の半数以上は、このFAGAであるといわれています。
そのためこれまでは女性の脱毛症=FAGAというイメージがありましたが、FAGAの病態だけで女性の薄毛を説明できないことも多く、近年では前述の通り女性の脱毛症のことを総称してFPHL(Female Pattern Hair Loss:女性型脱毛症)と呼ぶようになっています。
そしてFAGAはFPHLの中の1つと考えられています。
FAGAという名前はもともと男性型脱毛症の呼称AGAに“女性”の意味であるfemaleの頭文字FをつけてFAGA(女性男性型脱毛症)と名付けられました。
FAGAは、体内でのホルモンバランスが「女性ホルモン>男性ホルモン」であったところ、加齢により女性ホルモンが減少し、相対的に男性ホルモン優位となる(「女性ホルモン<男性ホルモン」)ことが原因で発症する脱毛症です。
そのためFAGAは40歳以上の女性に多いです。
このように男性ホルモンが発症に関係するためAGAの女性バージョンと捉えられています。
FAGAの症状については、FAGAがFPHLの中の1つですので前述のFPHLの症状を参照してください。
代表的なFPHL② 分娩後脱毛症
分娩後脱毛症は、妊娠から出産を経て女性ホルモンの分泌量が大きく変化するために起こることのあるものです。
分娩後2~3ヶ月以内に発症することが多いです。
女性ホルモンであるエストロゲンの量とヘアサイクルは妊娠後期~分娩後で大きく変化します。
具体的にはまず、妊娠後期にはエストロゲンが増加し、ヘアサイクルにおける成長期が延長する傾向にあります。
そして分娩後は増加していたエストロゲンが急激に減ります。分娩直後は妊娠後期の時に成長期が延長していたため成長期にある毛が多いです。これが分娩後のエストロゲン減少に伴って一気に休止期へと移行します。これが分娩後脱毛症の詳細です。
一般に分娩後2~3ヶ月経つと、エストロゲンの量が平常時に戻ります。それに伴いヘアサイクルの乱れも改善します。
まとめると、妊娠中~妊娠後期に本来であれば休止期に移行するはずの毛が成長期にとどまり、それが分娩後一気に休止期に移行するため急激に抜け毛が増えるということです。
分娩後半年程度で髪の毛が元に戻るため、対策は特に必要ないものですが、分娩後1年以上経っても異常を感じる場合は注意が必要です。出産後はそれまでと大きく生活スタイルが変わり、ストレスも生じやすいです。それによりヘアサイクルが乱れ続けている可能性があります。
FPHLの治療
FPHLの治療では原因によって使用するべき薬が異なります。
まずは市販薬を試して改善しなければ医師に相談、あるいは最初から医師に相談するのもひとつの手かもしれません。
市販薬には育毛剤及び発毛剤があります。
育毛剤
育毛剤とは、いま生えている髪の毛の質の維持・改善を目的としたもの、すなわち薄毛や抜け毛を予防するためのものです。
育毛剤には頭皮環境改善のための成分(抗炎症剤、皮脂抑制剤、血行促進剤など)が配合されています。
主として頭皮環境の改善により、今ある髪の毛の質の向上やヘアサイクル改善を目指します。
それにより将来起こるかもしれない薄毛や抜け毛を未然に防ぐためのものです。
発毛剤
発毛剤とは、新たに毛を生やす効果、いわゆる「発毛効果」がのあるお薬で、薄毛、抜け毛の改善を目的としたものです。
薄毛や抜け毛が生じている箇所での発毛効果を期待して使用します。
市販の発毛剤の外用薬成分であるミノキシジルには発毛効果以外に育毛効果、抜け毛予防効果もあるとされており、髪の毛全体、ヘアサイクル全体の改善が期待できます。
ヘアサイクルの改善、すなわちヘアサイクルにおける成長期の正常化が行なわれると、理論上は細い髪の毛が太くなることも期待できます。
女性におすすめの育毛剤と発毛剤は下記記事でランキング形式で紹介していますのでこちらを参考にしてみてください。
まとめ
最後まで読んでいただきありがとうございました。
いかがでしょうか。今回は女性の脱毛症FPHLについて解説しました。
今回の記事をFPHLについて理解を深めるための参考にしていただけると幸いです。
※お薬の使用時には製品パッケージに記載の注意事項をよく読み自分が使用しても大丈夫なのか確認の上、用法用量を守って正しく使いましょう。