「プロドラッグ」という言葉、聞いたことはあるでしょうか?
ほとんどの方にとっては馴染みのない言葉だと思います。
しかし、普段服用されている薬が実はプロドラッグだった、ということがままあるぐらいプロドラッグは身近なものです。
今回は近くて遠い言葉「プロドラッグ」について解説します。
技術が日々進歩するのは医療業界も同じこと。
効果をより大きく・長く、副作用は少なく工夫されたプロドラッグ、解説を始めます。
プロドラッグって何?市販薬ロキソニンSも実はプロドラッグ
早速ですが「プロドラッグ」とは体内で代謝されてから効果発現する薬のことです。
言い換えると、体内で代謝されるまでは効果発現しないということです。
具体的には、例えば口から水と一緒に飲んだ薬は胃を通り小腸へ向かいます。
小腸から吸収された薬は体内で代謝を受けます。この体内での代謝ののちに効果を発現する。そういう薬です。
プロドラッグ化の目的は4つあり、
1.副作用を軽減する
2.薬の効く時間を長くする
3.吸収率をあげる(効果を示さない割合、いわゆるロスを減らす)
4.味やにおいを改善する
です。
身近な薬だと市販薬の「ロキソニンS」もプロドラッグです。
ロキソニンSはプロドラッグ。その目的は?
全国のドラッグストアで購入できる「ロキソニンS」。このお薬は非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)の一種で、副作用として胃腸障害が起こることがあります。
この問題を解決するためにロキソニンSは口から服用したあと、まだ効果のない物質としてまず胃を通過し、小腸で吸収され代謝されたのちに解熱・鎮痛効果を発現するように作られています。
「ロキソニンS」のプロドラッグ化の目的は副作用を軽減することです。
ロキソニンSの成分ロキソプロフェンナトリウム水和物は非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)と呼ばれる成分の一種です。
NSAIDsは、体内で酵素の一種であるシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害することでプロスタグランジン(PG)という生理活性物質の生成を阻害し作用を発現します。
酵素であるCOXは炎症(筋肉痛とか)による発現だけでなく、胃や腎臓、その他の部位でも常に発現しており、COXを阻害すると抗炎症作用を示すのと同じように、胃腸などCOXが発現している場所へも作用することがあります。
よくある副作用で胃腸障害や腎機能障害があるのは、上に書いた通り胃や腎臓にもCOXが発現しているからです。
ロキソニンSのプロドラッグ化の目的はこの胃腸障害を軽減するためです。
ロキソニンSシリーズについては下記の記事でまとめました。
→市販薬ロキソニンSシリーズを徹底比較【眠気注意のものは?】
まとめ
最後まで読んでいただきありがとうございました。
いかがでしたでしょうか。
専門用語「プロドラッグ」ですが、実は身近な「ロキソニンS」もプロドラッグであることを知ったことで「プロドラッグ」という言葉も身近に感じられるようになったのではないでしょうか。
医療用医薬品では抗がん剤の副作用の軽減、心臓の薬の作用の持続化などでプロドラッグの技術が活躍しています。
抗がん剤でのきつい副作用が軽減されることはもちろん患者さんにとって有益です。
薬の作用の持続化は、それにより1日3回服用しなければいけない薬が1日1回服用で良くなる
→飲み忘れる確率が減る
→医師の処方意図により近い治療効果が期待できる
→患者さんの病状の改善が期待できる
これも患者さんにとって非常に有益です。
1日3回の場合、飲み忘れは多くの場合昼食後、夕食後、朝食後の順で多い傾向があります。
1日3回服用の薬が1日1回朝食後服用となれば、指示通り飲めそうですね。
ということで今回はプロドラッグについての解説でした。